紅茶と砂糖

 基本的に紅茶に砂糖を入れない派だった。 色々と紅茶については再発見があったので書きとめる。

 どちらかというと砂糖は紅茶の味を壊すという感覚があった。抽出時間を間違うと、紅茶は渋くなる。うま味成分以上に渋みがでてしまうからだ。砂糖が必要な紅茶は入れ方を失敗しているからだという感覚があった。甘ったるくして渋さをごまかす、これが砂糖に対する感覚だった。

 通常の白い砂糖とちがって三温糖を使うと甘ったるくはならない。これがまず砂糖をつかっても良いかとおもった第一歩だった。甘味が程良くあると、つかれているときにはやはり美味しく感じる。

 もうひとつ、フレーバーティの場合砂糖を入れていくと面白いことが起こる。増村さんの説明で色々と試してみてわかったのだけれど、天然果汁をつかったフレーバーの場合糖分を足すと味も香りも変わる。それはただ甘くなるというのではなく香りと糖分が結びつくということだ。

 たとえば、「薔薇と桃」のフレーバーの場合、ストレートで飲むと薔薇の香りが、糖分を足すと桃の香りが強く感じる。どうも、果汁に糖分を足すことで味覚がその果物に近づくらしい。これが、「桃マンゴー」フレーバーの場合だと更におもしろく、少量の加糖の場合は桃の味が、更に加糖するとマンゴーの味にかわる。これはどうも、その果物の糖度にちかづくとそちらの味に切り替わるようだ。

 ケミカルでなくナチュラルだからおこる現象なのかもしれない。こういった楽しみがあるならば、フレーバーもなかなか悪くないなと最近思い始めた。先日ディンブラを飲んだ際に、2杯目以降に砂糖を少し足してみた。ティースプーン一杯だと三温糖の場合甘さは出ない、その代わりに単純に濃い目のお茶が良い意味でまろやかになる。二杯足すと若干甘味が出る。体調等にあわせて調節してみるのも面白いだろう。

 本店の場合、甘めの紅茶を飲みたいときは手元ではなく、加糖した状態で手元にもらう。このあたりの砂糖のバランスはフレーバーによっても違うので入れ手の腕に関わってくる。紅茶の抽出量と砂糖の量を調整するのはかなりの経験が必要になるだろう。客の好みに合わすなら余計に大変だ。

 今まで紅茶は、他人が入れるより自分で入れる方が必ず好みの味に入っていた。そういう意味で喫茶店にお金を払う気がしなかったのだけれど、SPOONやムレスナ本店では茶葉+技術というものに対価を払っているという感じがして良い。

 正直にいわゆる喫茶店というものの技術は酷すぎると思う。コスト面で色々あるのは分かるのだけれど、明らかに普段自分が入れられる紅茶よりも手抜きされたものが出てくる。ケーキ屋といわれるカテゴリですらそうだ。それはレストランにいって自炊するより手の込んでない料理がでてくるようなもので、そんなところにご飯を食べに行く気がしないのと同じ事だ。しかし、喫茶店といわれるものの殆どはその不思議がまかり通っているように見えるのだが気のせいだろうか。

 おタキさんにアフロさんはSPOON好きねぇといわれるのだけれど、初めて技術的なもので驚きを感じることが出来たのでそういう意味ではとてもお店に行くのが楽しい。まぁこういった話は、山元麺蔵のように万人に分かる話ではなく、一部のすきものだけに受ける話かもしれない。