ジャンピングと水

 Ikehonがコメントで

 お茶は汲みたての水道水が一番という定説は?今は違うのかい?

 といっているので、現時点での私のこの二つについての見解を述べてみたいと思う。

 まずそもそも、紅茶を入れるということは、茶葉から味や香りを引き出すということが目的だ。水にしろジャンピングにしろ求めているものは、美味しく紅茶を入れることが前提となっている。

 まず、ジャンピングとは何だろうか。沸騰したてのお湯の中の対流に茶葉がのることだろうと思われる。いってみれば自動的にかき混ざることで茶葉から味を引き出すということがジャンピングの特徴だろう。循環することにそれほど意味はない。循環したことで味がでたことに意味があるのだ。だとすればジャンピングしなくても味が出れば何でもいいのである。

 それをふまえると、一つ面白い事実がある。Ikehonのコメントにある「汲みたての水道水が一番」という文言の前には「買ってきたミネラルウォーターよりも」という前置きがつく。単純に水としての味を比べると、カルキ臭い水道水とミネラルウォーターでは一般的には後者の方が美味しいだろう。にもかかわらず「汲みたての水道水が一番」といわれるのは水の中に含まれる酸素の量に由来する。

 すなわち、酸素の量が多い方がジャンピングしやすい(このことは、沸騰しすぎたお湯を茶葉に注いでも余りジャンピングしないことからもわかる)ほうが茶葉から味が出やすいという結論を導く。ようは単に水道水とペット詰めのミネラルウォーターでは前者のほうがジャンピングしやすいだけなのだ。

 だとすれば、ジャンピングは別に目的ではないので、美味しい水で、手動で優しく攪拌してもジャンピングの目的は達するので問題はない。基本的に水道水はカルキの臭いがどうしてもしてしまうので後味が悪くなる。

 そもそも、ジャンピング信仰というのは、どうも日本だけにある良く分からないものらしい。パスタをフォークとスプーンで食べるのと同じように間違った認識であるようだ。

 個人的に茶葉の抽出に関して一番キーになるのは、水の硬度のようだ。日本の水はヨーロッパと比べて殆どが軟水(沖縄以外)らしいのでジャンピングしなくても十分抽出できるということもある。抽出に関しては軟水を使っていればそれほど心配はないし、そう考えるとジャンピング云々よりも水自体の美味しいさの方が余程問題になる。

 ということで、あえてミネラルウォーターを避けて水道水を選ぶメリットがないというのが私の結論。そしてジャンピングも、そんなにこだわる必要がないかなと。

 余談だけど、日本で紅茶を普通にいれて、抽出時間5分とか普通に書いている人たちは一体どんな茶葉で入れてるんだろうと思う。いまだに、水500gにティースプーン3杯+ポット用で1杯で5分とかいう記述をみるが、渋くて、仮に良い茶葉だとしても濃すぎて常人は飲めないよそんなの。私は相当濃い紅茶が好きだが、ティースプーン4杯ならダージリンでも40秒が限界でそれでもちょっと濃いよ。ムレスナのフレーバーティでティースプーン2杯を水600gで1分が丁度ぐらいかな。硬水だと5分ぐらい必要なようだけれど日本じゃそんな水を手に入れる方が難しいだろうに。

 紅茶ではないけれど、先日テレビ番組で鰹節の消費量ナンバーワンが沖縄だという話がでてきた、沖縄は水が硬水で鰹節を大量に使わないと全く出汁が出ないそうな。テレビだからあてになるかは分からないが、軟水と硬水で比較実験をしていたが、色からして全くちがうぐらいだったので、紅茶でも5分というのは納得できる話だ。