うしおととら 藤田和日郎


 私は王道が好きだ。予定調和な作品の方が後味が良い。現実はそんなに甘くないという言葉も聞こえてきそうだが、甘くないからこそ王道にはカタルシスがある。

 絵柄的に好き嫌いはあるのだろうけれど、ストーリー的には秀逸的な方だと思う。前半にまかれた伏線も回収されている方だし、何より少年の成長譚としてはこのたび全てに意味があったんだろうと思わせるラストだったように思う。

 私は、まっすぐな人にあこがれる。私自身がぶれやすくフラフラして弱い人間だから。シュムナの話は個人的にはぐっとくるものがある。全体的に、本筋に関係のないと思われるサイドストーリー的な章が話しに厚みを持たせている。うしおの人間的成長を描くための手段として出しているのだけれど、その総括として最期に門から皆が出てくるときに、その旅の成果みたいなものを感じてうるっとしてしまう。

 それぞれのキャラたちの個性も際だっている。特に私は秋葉流が好きだ。中にある闇が、うしおではなくてとらで昇華されていく最期のあの結末も何とも言えない。この人は、人間を表現するのが上手いと思う。どことなく暖かく、そして寂しい人を表現する。

 未読の人がいたら是非とも読んで欲しい。好みはあるかと思うけれど、時間を無駄にしたとは思わないと思う。