ふたり鷹 新谷かおる


 ぼちぼち手持ちの漫画について書いていこうと思っている。

 今回は新谷かおるの代表作のひとつ「ふたり鷹

同じ名前と誕生日を持つ、沢渡鷹と東条鷹。数奇な因縁で結ばれたふたりの「鷹」が、耐久二輪レースの世界でライバルとして互いに高め合い、共に頂点を目指す姿を描く。作者本人のコメントによれば、タイトルは日本映画にありがちなダサいものらしく、ダサくダサくして決定したという。bywikipedia

 新谷かおるは私の好きな作家の一人だ。作品買いでなく作家買いをしてハズレも含めて結構もっている。最近はやはりパワーが無くなったんだなぁと凄く感じることが多くて残念だ。

 私はこの作品の肝は主人公の母親沢渡緋沙子だと思っている。この人がなくてはこの作品は成り立たないだろう。誤解を受けるのを承知で書くと、私は強い母親像というのが好きなのだ。ふたり鷹の沢渡緋沙子しかり六三四の剣の夏木佳代しかり。

 この作品は主人公の沢渡鷹の魅力よりも、周りを取り巻く人々の魅力で成り立っているようにおもう。花園やポップ吉村(これは実在の人物だが)沢渡緋沙子など皆キャラクターが魅力的だ。純粋なレース漫画というよりも人間模様を楽しむ漫画ではなかろうか。

 新谷かおるはもの凄くレースが好きなのだろう。レースそのものというよりそれを取り巻く人間模様が好きなのかもしれない。「ガッディム」でも「ジェントル萬」でもそのあたりのコンセプトは変わらない。

 大学時代の先輩が新谷かおるの書くメカは色っぽいとよく言っていた。確かにこの人は車にしろバイクにしろ戦闘機にしろ独特の丸みをもって書く。少女漫画のようなキャラクターで男臭い題材をがんがんと扱う不思議な作家のように思う。

 今、この作品を見ると、当時の有名レーサーが実名で出ていて面白い。先ほどあげたポップ吉村をはじめとしてスペンサーやら色々と。これが「バリバリ伝説」だともうチーム監督になっていたりする。ノービスというのももう今では死語なのかもしれない。少し前まではまだ「スーパーノービス」なんて言葉が使われていたようなきもするが。なんというか、CATVで侍ジャイアンツの再放送をやっていてサードに長嶋が守っているのと同じ懐かしさを感じる。

 事故で奥さんを亡くした東条が、バイクの事故について語るシーンがある。そして、その時代からもうすでに20年が経とうとしているけれど、バイクそのものは20年前とそれほど変わっていないように思う。それは私がバイクの乗らないから分からない錯覚なのだろうか。秘めた力と安全性が一致しない乗り物だと思う。事故率は仮に車と同じとしても損傷率が話にならない。

 何にしろこの作品はまたちらっと思い出したように読みたくなって本棚からだして読んでしまう。もう多分30回以上は通して読んでいるだろう。こうやって記事にかくとまた読みたくなるわけだけれど。