神戸在住を読了

 なかなか手に入らなかった最終巻を手にして、とりあえず本編は読了。今週末に頭から読み返すのも良いかなぁと思う。10巻でキリ良くまとまったように思う。

 大学生の日常をかなりリアルに描いているように思う。最終回の卒業に関する話は自分自身も似たような感慨を持ったので、かなり懐かしい気分になった。漫画上で主人公の日常を書くときに、主人公の生活シーンを複数に分けてそれぞれの人間関係を多重に矛盾無く書くことはフィクションでは非常に難しいと思う。

 どういう形にしろ、自分の学生時代を踏襲して書かれていると思うのだけれど、作者はどうも女性では無いらしい。北村薫にすこし似た世界観だと思うことは前回にも書いた。作者は性を扱うのが嫌いなタイプなんだろうかと思ったけれど、巨娘を見る限りとてもそんな風には思えなくもなった。というかこの作者が両方の作風を持っているのは凄い話だ。

 作品の中にでてくる、フォーチュンスターという絵が、最後にまた伏線として登場する。一巻でその絵がでてきたとき私はそれをスキャナで取り込んで壁紙にしていたぐらい好きだったのだけれど、また作中で無くなった彼を思い出す為の呼び水となったことは何とも表現しがたい思いになる。

 私は馬鹿なので、元町に彼のお店が本当にあるのではないかと思って、あの辺りを歩いた。まぁ後から考えたら馬鹿馬鹿しい話なのだけれど、それぐらいこの漫画の世界観が好きだった。(実際にあるお店も紹介されていたし)

 そもそも、神戸在住は世界観そのものあったけれど、最初に衝撃を受けたのは生々しい震災の話だ。震災ボランティアについての描写はとても生々しく舞台化されたりもした。

 この話は、そもそも私が大学時代に始まった。当時は時系列的に自分自身と近い年代でもあった。私はもう30代になってしまったけれど、彼らはこの一月にやっと卒業した。随分年の差がついてしまったものだ。これで私がどうしても最後まで読んで、そろえたかった漫画は完結した。漫画を買うことを止めると決めた、その後からの残り火も潰えたわけだ。

 Asvaなんかにはアフロの家の漫画は凄い中途半端に揃ってると言われている。それは自分が止めると時間を止めたからで、それから先の物語は無い。ただ止めきれなかったこの作品だけが私の中で時を刻んだわけだ。そう考えると、この漫画が終わったというだけでなく、私の中で漫画が終わったなぁという別の感慨もある。最後を飾るには良い作品だったと思うから満足だ。