棋譜並べ

 久しぶりに棋譜を並べた。日常で碁を打とうという気には実はあまりならないのだけれど、並べたり本を読んだりするのは楽しい。

 特に棋譜並べはどこか名画鑑賞に似ていて並べることで乱れている心が落ち着く。書道なんかと同じなのだろうか、自分が実際に打ったわけでは無いのだけれど藤沢秀行の碁を並べると疑似体験したような気になる。

 これは、PCの碁盤でピコピコ並べてもそんな気分にはなれず、碁石を握って実際に碁盤に打ち下ろすことでしか感じない。碁盤に石を並べるという行為が好きなのかもしれないな。

 昔は、眠れない夜に、なんとなく碁盤の前に電気もつけず座って自分が憶えている記譜や定石なんかを並べて、羊を数える行為に似たこととして眠りについていた。

 ここ何ヶ月か、研究会にも日程が合わなかったり、ほかにやりたいこともあって何ヶ月か囲碁からは全く離れる生活をしていた。そんななか、昨日思い出したように藤沢秀行棋譜集を久しぶりに引っぱり出してみた。

 一時期はほとんどの棋譜を暗記していたのだけれど、さすがにもう10年も前の話なので棋譜を見ながら、解説は読まずにゆっくりと終局まで並べた。ちょうど終ったら時計は10時をさしていた。

 自分でも、碁が好きなのかどうかわからない。ただ本を読んだり、棋譜を並べたりはずっとしていくのだろう。なんかその意味不明さが自分っぽいなぁとふと思った。