匿名論争

 某界隈で匿名の是非等が論じられている。あまりそういう論争に参加したことは無いけれど所感だけ。

 実際匿名というけれど、何処までを匿名というかは難しい。実名以外は全て匿名としてしまうのか、それともハンドルネームは匿名ではないにしろ個体認識できればOKなのか(いわゆるコテハン

 しかし、コテハンはともかく、実名を明かす事にこだわる人達というのは言論に責任を持てという主張なのだろうか。社会的(この場合は実社会)地位を担保にしないと発言の判断が出来ないと言うことなのか。

 今の実名匿名論争は論点がいまいち掴みにくい。結局の所、実名で何かを講評している人達が、自分たちの名誉が毀損されたときに報復の手段が無いことをわめいているようにしか見えない。少なくとも、論議において発言者の一貫性が保たれる(誰がどう発言したかわかる)ことさえ担保されていたらそれ以上の問題はないように思うのだけれど。

 「後ろ暗い事が無ければ実名に差し支えはない」という発言もあるが、これはあんまりな発言だろう。発言に関しては身元をはっきりさせることによるリスクは非常に高い。

 発言の質を高めるため、自らのバックボーンを晒すことが、実名というリアルとのインデックスを得るとそれ自体が悪用される可能性が高いからだ。議論等はそもそも、その人の発言を元に展開されるので、その会話に必要な根拠のみを示せば匿名(コテハン)であっても成立すると言える。その最低限の公開さえあれば十分コミュニケーションは取れると思うのだけれど。

 晒すことによる覚悟が自分だけに関係するのなら良いけれど、現実へのインデックスを与えるということは他者へのリアルへのインデックスを与えることにも他ならない。丸見えとまでは行かなくても透けて見えるものは沢山ある。

 そういった、プライバシーは基本的にドベネックの樽で意識の一番低いところから漏れていく。実際に、まわりでもそういった事が原因でサイトを閉鎖している所もある。公開者は善意であっても公開された情報は善意に取り扱われる保証はどこにもない。だとしたら危機管理として必要以上の情報を公開しない権利は当然あるようにおもう。

 誰かが、内部告発などの一部の場合を覗き、匿名である必要は全くないと言っていたが、実名である必要も全くない。少なくとも、出版業界において、全てが実名で書かれているわけでもないし、この人がペンネームだから作品の価値が下がったなんて言うことは私は聞いたことがない。

 私は、実名をあかすことが問題と思っているわけではない、リスクとリターンを考え、自分で判断すれば良いことだと思う。ただ、実名信望者は他人にそれを強要する事が多い。自サイト内での振る舞いは確かにある程度サイト管理者にゆだねられているので構わないと思うが、それ以上を声高に叫ぶのはどうだろうかと思う。

 極論をいうと、国民インターネット総ID制度でも導入しない限り、実名を名乗ったところでハンドル以上のなにか担保があるわけでもないように思う。本当にその人が書いているかなんて、判断しようがないのだから。

 大概、匿名を嫌がる理由は、匿名を盾にろくでもない意見を書き込まれるという事だけれど、匿名だろうと実名だろうと本人の質は変わらないのでそ、そこ(匿名な事)は大きな問題でない。匿名だろうと真っ当な意見をかかれば腹も立たないわけで、くだらないことを書くなといえば済むことではないだろうか。名前が付いていたってくだらない書き込みはくだらない書き込みなのだ。

 発言の閾値を匿名が下げているという考えもあるが、それがWEBという環境を利用するための前提条件なのだから、むしろ公開する側が正しい予防策をとって閾値を上げるのが正常な判断というものだろう。本質的にWEBに公開するということは、どんな形であれ自由に閲覧されてしまうのだ。それをふまえた上で情報を公開して不都合には自らがID制による書き込み制限などの正しい予防対策すべきだと思う。