部屋に窓がない。私の部屋は正確には倉庫だ。倉を改造したその部屋からは空は見えない。

 その日の当たらない生活が今までは良かったのだけれど。別に外が見たいわけじゃない。ただ空を見上げるための窓が欲しい。

 まだあの部屋に入る前、ベッドに横になりながら空の雲を眺めるのが好きだった。寒い冬の夜に落ちてくる雪を眺めるのが好きだった。いつからかその感覚を忘れてしまっていた。

 最近、遠くにあるものよりも近くに当たり前にあったものがどんどん無くなっている事実に改めて気が付いた。すこしずつでも時は流れて状況は変化し続ける。そんな中で形を保ち続けていることがなんと難しいことか。

 昔、自分が窓を通してみていたものが果たして今あるだろうか?窓がないあの部屋で変化に気が付かず生きていくことは悲しいことかもしれない。