送る言葉・・・

 アニメ監督の今敏さん死去とニュースをツィッターで見かけた。熱烈なファンというわけではなかったけれど、たまたまビデオ屋で手に取った「パーフェクトブルー」はとても印象に残っている作品だった。千年女優妄想代理人、パプリカと独特の世界観のある監督だったように思う。
 ファンに向けての最後の文章が公開されていたようだ。原文はサーバー落ちしているのでタンブラーのリンクをhttp://kikori2660.tumblr.com/post/1007816998/5-18
 去年、母親が式のあと自分がステージⅢの癌だということをうち明けてきた。手術はギリギリできるけれど転移に関しては当然保証されなかった。それを高校時代の友人との飲み会でうち明けようと思ったとき、もう一人同じように父親が癌だと別の友人からその飲み会でうち明けられた。その時、お互いに手術が成功するよう励まし合った。彼の父親も妹の結婚式が終わるまでは黙っていたらしい。
 高校時代、彼の家に入り浸っていた。夜遅くまで部活の仲間とその家にたまってエキサイトステージスト2をやっていたことを思い出す。親父さんはゲームが好きで、よく仕事が終わった後提督の決断をやっていたりするとても身近な人だった。自分も可愛がってもらっていただけに心が痛んだ。一度は見舞いに行かないとと思いつつずるずると時を過ごしていた。そんなある日、彼から転移してもう長く無いという話を聞いた。お見舞いにという話をしたのだけれど、彼からは断られた。
 たまたま母親とその話をする機会があったのだが、お父さん宛に手紙を書いた方が良いんじゃないといわれた。最初は彼に向かって手紙を書こうかと思っていたのだけれど、母親はお父さん宛に書くべきだという。自分も手術前後に頂いた手紙にどれだけ力をもらったか分からないと。
 実際、机に向かって筆をもっても自分には親父さんに向けて筆を進められは今のところ出来てはいない。余命を告げられた人に何を伝えればいいんだろう?ただ彼に聞いた話では親父さんは抗ガン治療をまだ続けるつもりで諦めてはいない。だとしたら余計に何を伝えたいのだろうと悩む。
 何かを送ることは自己満足にすぎないと思ってしまうということもある。送りそびれればそれはそれで何かが自分の中に刺さったままになるのだろう。彼の親父さんという微妙な距離が余計にどうしていいのか決めかねる。