失われた風景


 新居には自分のものを殆ど持っていっていない。最低限の着替えとひげそりなどの日用品、そしてPCだけだ。

 酒や食器、そしてステレオや大量の本は全て実家に置いてきた。もともとが一人暮らしではないのでそんなことが出来るのだけれど、実家にたびたび戻る気も無いのである意味切り捨ててきたともいえるだろう。本なんかは処分したかったのだけれど、ブックオフに電話して査定してくれといったら3000冊は丸一日ぐらい査定がかかるので人手的に無理ですと断られた。

 そして、私にとってお気に入りの数々はお気に入りであることは間違いのないことだけれど無くても何とかなるものばかりだ。良い悪いの査定をせずに一度全て切り捨ててみると、本当に自分にとってコアな存在は何だったかということが改めて再認識出来る。ある種実家という担保を通じてなので捨てるというよりは卑怯なやり方なのかも知れないけれど。

 いままで、酒にしろ漫画にしろ自分の生活から切り離せないと思っていたものをバッサリ切り離してきた経験から、止めるということは切っ掛けさえあればそれほど難しく無いのかも知れない。それは私がモノに関する執着が薄いということなのかもしれないけれど。

 部屋の模様替えをするのが好きなので、その時々の優先度にあわせて部屋を作り直す。たまたまオフ会なんかの写真をみているとそういった時の失われた風景が見られる。そういえばこのときはこんな事に主眼をおいて部屋を作ったなと懐かしく思う。