なかった

 仕事が終わって家に帰ると晩ご飯が犬に食べられて無かった。

 年始にファーレンが久しぶりにうちに遊びに来た。ダックスのぴっけを東京につれていくということだった。実家では事情があって飼ってもらえなくなったらしい。一人暮らしで、犬を一日中ゲージに入れているのはかわいそうだから里親を捜そうかと思っているというので、母親が犬を欲しがっていることを思い出し聞いてみることにする。

 結局、急遽とりあえずうちで預かることになって現在我が家にいる。色々とまだまだ暴れん坊だ、ご飯を食べたりトイレを失敗したりと、やりたい放題やっているようだ。親たちは色々文句も言いながらも嬉しそうだ。父親がピッケのことをボブと呼ぶのが気になるところだが。

 ボブがガンで亡くなった後、二度と生き物を飼うのはやめようと思った。正直かなりこたえた、ピッケは確かに可愛いのだけれど、ふさがっていたと思った古傷がやたらとうずく。フラッシュバック的に思い出すことがたくさんある。全然違う犬なんだけれど、間違ってボブと呼びそうになる。

 何にしろ、最近疲れ気味だった両親が心なしか楽しげなのは良いことだ。世話を焼く相手がいることが楽しいのだろう。そういう意味では預かって良かったかなと思う。ご飯は食べられなかったのだけれど。