SPOONのクリスマスディナー

 クリスマスはどうするかなと思っていたところ、SPOON本店でクリスマスディナーをするということで予約して行ってきた。限定7組で紅茶に合わせた料理を提供するという珍しいディナーだ。初めての体験なので楽しみにして行ってきた。メニューは以下の通り。

 〜Entrata〜
ムレスナティージュレに包まれたオマール海老と雲丹の軽いマリネ
スペシャリテ フォアグラのテリーヌ白胡椒の香り
〜Antipasto〜
冬野菜のヴァポーレ バーニャカウダーソースで幻の生ハム“ハモン・デ・トレベレス”とともに
鳥取境港直送!天然ひらめと松茸のインヴォルティー
西田ファームで育った優しいかぶらのスープ仕立て
〜Primo piatto〜
キャビアの冷製カッペリーニ 下仁田葱を添えて

鴨と黒トリュフのタリアテッレ
イタリア赤ワインの王様“バローロ”のラグーソース
自家製リコッタチーズ添え

〜Secondo piatto〜
黒毛和牛フィレ肉のクレスペッラ包み
シャンピニョンデュクセルとともに

〜Dolce〜
聖夜のドルチェ
ムレスナティーをごゆっくり

 よく見ると世界三大珍味が全部入っている。増村さんがクリスマスは公開赤字の日で採算度外視ですと言っていたのでその通りだったのだろう。

 普段だと、それぞれの料理に関してコメントをしていくところだけれど、残念ながら今回は首を傾げる部分が多かったので、そちらについて書いてみたいと思う。今回のディナーは色々と飲食業の難しさを感じたディナーだった。

 まず第一に、今回のディナーは厨房が回りきっていなかった。厨房が田井中さんだけだなぁと来たときに思っていたのだけれど、後から聞いたらやはりホールスタッフが他店の応援にいっていたらしい。そのせいかどうか分からないが、料理の塩味にムラが出ていた。私的には、高い原材料を頑張って使う必要があったかなぁというのが一番最初に思ったこと。温野菜のサラダやかぶらのスープなんかはとても美味しく、SPOONらしさが出ていた。

 実際の所はわからないが、私の素直な感想は料理が構成より、材料ありきで作られたなという感じがした。これは感覚的な所なので正直なんとも言えないのだが、品数と品種がバラバラに思えた。コースの構成というよりも出したいものを並べたと感じた。それが個々の料理のうまさとは別に、コースとしてのまとまりを感じさせなかった気がする。

 今回一番致命的だったのは、紅茶に合わせた食事だったにもかかわらず、紅茶が食事にほとんど追いついてなかったこと。コンセプトは面白かったと思う、実際ウマイ組み合わせになっていた。ただ全体としてのかみ合わせがうまくいっていなかったので、食事をしている側としてはリズムが悪かった。この辺りが普段コースというものを扱っていない店の致命的な欠点だろうと思う。純心庵なんかはそのあたりが徹底している。

 冷静に考えると、コースの組立の中に紅茶をいれるのはお酒よりも難しい。お酒はつげば良いが、紅茶は抽出という作業がある。増村さんが紅茶を作り置き出来るわけもなく、紅茶を入れる人が増村さんとゆうこさんのふたりで、7組のタイムラグのあるお客に料理に合わせてタイミング良く紅茶を出すのは至難の業だろう。そこが今回のコースの最大のネックになっている。それと、紅茶に合わせたと銘打った以上は、料理と紅茶の組み合わせコンセプトの説明は一言で良いから欲しかったかな。そのあたりはホールに余裕が無かったことが影響しているのかも知れない。

 というわけで個々の品よりも、まとまりが感じられなかった方が問題だったような気がする。嗜好が合わない品があっても全体として綺麗な流れだと満足できたんだと思う。同じ内容で「あれは少し口に合わなかったんだけれど全体としては凄く満足した」というのと「美味しいかったんだけれど、なにか違和感があった」というのではえらく違ってしまう。残念ながら今回、私が感じたのは後者だった。初見だったら2度目はなかっただろうと考えると、怖いなと感じた。

 ただ、一つ言えることは色々チャレンジしないと分からないこともあるし、お店自体はまだまだ若いのだから次に向かって色々と改善していってくれたらなぁと思う。紅茶に合わせた料理というコンセプトは面白いと思うし、実際、それ自体はよくあっていたと思う。来年また同じ企画があるならどういう形になっているか期待したい。